Liner Notes from Bee.Bee.(洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコース作曲専攻卒)

xbtcd29 - V.A. / RAID EP

02 - II-L - sun

 

アラビア音階(マカーム)を本格的に用い、テックダンスというフォーマットに落とし込むII-L氏の新しい試みでもある奇作。

具体的にはフサイニー・ウシャイラーンというマカームで、

音階として説明すると「A,Bq,C,D,Eq,F,G,A」となり、BとEでは半音ではなく1/4音下げられているというもの。

このトラック以上に"異国情緒"という形容が言葉通りに当てはまる物は無いだろう。もはや異国。

 

 

03 - A-Re: vs Philce - LALLAPALLOOZA (Vali5tiK remix)

 

ストリングスの流麗な空気感と、聴き進めては現れるフューチャーベース的浮遊感と酩酊、

歓喜に身を任せ無重力中を舞うような心境。

ソリッドなリズム周りの地盤があってこそ反重力性が引き立っている。

 

 

04 - Philce - World Wide Wobbbacon

 

またしてもPhilce氏のwobbシリーズの新作が更新。

タイトでありながら各音色の潤沢な倍音成分が、如何にもカリッカリなベーコン。

アーメンブレイク独特の淡くジャリジャリ心地よく荒い解像度も言わずもがなザックザク食感もとい聴感。

食レポなのか曲レポなのか分からなくなりました。

 

 

05 - s-don - Funkabeat

 

シンセサイザー色の強い音色が控えめな為か、フィジカルなグルーブを強く感じさせる一曲。

ブラスメインのリフレインと生系パーカッションも組み込まれ、南米の空気を直に吸い込んでいる気さえしてくる。

s-don氏が持つ手法の引き出しの多さが垣間見える。

 

 

06 - Yosshie 4onthefloor - Unimaginable

 

在りし日の2step/garage系のフィーリングを想起させるサウンドが余す所無く盛り込まれている。

テックダンスとの邂逅により、同ジャンルの中でも

かなりクールでセクシーなキャラクターのトラックとなっているのでは無いだろうか。

Yosshie氏の持つ透明感を伴う作風が、更に洗練され形を成している。

 

 

07 - Bee.Bee. - Twisted

 

やりたい事を100%このジャンルに突っ込んだ結果こうなりました。

今迄、NRG的な音色を部分的に用いる事はあったが、そのまま載せたようなアプローチは敢えて避けてきた。

果たしてハードグルーヴ系統の枠をはみ出そうとも、一つの提起としてこういった物があっても良いのでは、

という思いを込めました。両ジャンルを跨ぐツールとしても機能してくれれば幸いです。

 

 

08 - ni-21 - Snowfall

 

往年のフルオン系サイケにも通じる男気のような様式を感じるni-21氏の作品。

題にこそsnowとあれど、それすら溶かしてしまえそうな熱気を湛えている。

当人の根性と反骨精神が反映されているようにも感じ取れる、

日常のカンフル剤としても、ミックス内にもエネルギー量を足す際にも十二分な楽曲。

 

 

09 - cochaMe - Advance

 

ハードトランス特有の煌びやかさ、ボトムのドライブ感、奥行きとサウンド構成全体の立体感。

いずれの要素も文句なしのトラックである事は間違いない。

ドミナントマイナーをドミナントに変化させず用いることで、感情的な要素の代わりに、

重力を生じさせない自由なイメージを持つことが出来る傾向が生まれる。

突き抜けた爽快さの先は、雲ひとつ無い碧空か満天の星空か。どちらかはリスナーにイメージを委ねよう。

 

 

10 - Raxot - Eskalation

 

「タイトルのスペリング、捻ってあるなあ」と思いきや冒頭のMCでドイツ語だとようやく知る。エスカラツィオン。

どこか威厳のある響きの言語の耳触りと、叩きつけるパワーのあるキックの相性が中々に侮れない気持ちよさ。

ミクソリディア特有の明るくも柔らかい雰囲気に、文を認めさせて頂いている私は思わず

System F - Dance Valley Theme 2001の辺りを思い出してしまった(新しくなくてごめんなさい)。

実は今回のコンピレーションCDの中で唯一のハードスタイル枠である。

 

 

11 - CaZ - This Mind of Mine (Zac Remix) 

 

普段当レーベルのコンピ内でトリのハードスタイル枠を務めるCaZ氏の弟を名乗るZaC氏のUKハードコア楽曲が、

今回のアルバムを締めくくる。CaZ氏は「彼は旅に出た」と語っていたが、その過程で得たものを今作に込めたのだろうか。

血の成せる業か、透き通るヴォーカルとカッティングギターとピアノが見事にエンディング感を申し分なく演出している。


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xbtcd30 - V.A. / GOLD DISC [DISC1]

01 - II-L - with your soul

 

ハイレベルなコードワークを始め、緻密な楽音の扱いに長けるII-L氏らしさが前面に出ているトラック。

元々ベーシストである彼の得手とするベースラインが、輝くオブリガートとコードシンセの隙間を縫って、

聴き手に饒舌に語り掛けてくるようにも感じられる。非常にバランスの取れた味わい深い一曲であろう。

 

 

02 - Yosshie 4onthefloor - Future Star

 

トーナル→クロマチックな構造がブレイクからのギャップが印象的な作品。

フロアでの効果はかなりの強いフックとなり得るだろう。この部分におけるダウンビートにも取れる感覚は、

オーソドックスなテックダンスのそれに通じるものも想起させる。

 

 

03 - A-Re: vs Philce - Topological Defect

 

サウンドの相転移とも解釈が出来そうな題と展開を併せ持つA-Re:氏とPhilce氏の合作。

シュランツライクなスピード感を覚えるエリアと、3連ハードスタイル部位、ダブステップ系への変移。

固体から液体や気体へと次々と姿を変える様でいながら全体の整合性が保たれている。

矢継早に異なる空間へ投げ出されるような錯覚さえ覚えることだろう。

 

 

04 - Remo-con - fill harmonik

 

Donkのバウンド感とFunkyな作風の融合が果たされた、Remo-con氏の異色トラック。

トライバル且つハードグルーヴな要素も交わることで気付かされるが、元々パーカッシブな要素の強いDonkベースが、

この様に相性がいい事を再認識させられる。気が付きそうで未だ誰も実行しなかった試みであろう。

是非この新感覚のマリアージュを耳で堪能して欲しい。

 

 

05 - Bee.Bee. - Titanomakhia

 

非現実とされる事象を表すとなった際、やはりアブストラクト且つ境界の見えにくいような

サウンドスケープを意識する必要があった。非常にテクノライクな構成となっているが、

本来の目的である浮遊するようなトリップ感を演出する上では却って好都合であった。

神々の御業は得てして認識に易くない。

 

 

06 - ni-21 - Oblivion

 

黎明期のテックダンスの和声パートのスライス感と、ni-21氏の十八番であるTB-303リフの邂逅。

タイトル通りの、忘却への逆行を実現しながらも、彼特有のパワフルで心地よい粘り気のアシッドが同時に味わえる。

低域を支配するキックのボディ、その上で奔放に振る舞うアシッド、そのまた上で光が差し込むような硬質なコードシンセ、

いつもながら、荒廃した世界にジリついた光が差し込むような映像が流れ込むように思えてならない。

 

 

07 - Ayatsugu_Otowa - Gung-4-Guns

 

今回始めてexbit traxに作品を提供して下さったAyatsugu_Otowa氏の重厚な一作。

メタリックな質感を覚えさせるアグレッシブな側面を見せつつも、その表皮に硫化皮膜の金属の味を感じさせるような、

威力を秘めながらも決して聴く者に疲れさせることのない構成。

月並みな表現ながらも、燻し銀とも形容できる魅力を持つ味わいを内包している。

 

 

08 - SANY-ON - FUJIYAMA

 

SANY-ON氏、やってくれたぜ&やってきたぜ富士急アトラクションシリーズ最新作。

果たして搭乗した事が有るのか分からないが、クリシェを強調した滑らかなパートから、

実在のFUJIYAMA独自の180°旋回を体現するかのような密度の高い激しい作風へと急変する。

DJユース以外にも、実際にFUJIYAMAに乗りながら本作を聴いてみるという楽しみ方もアリかも知れない。

 

 

09 - s-don - Ascention

 

往年のテックダンスメイカー、Night Liberator氏の曲調を彷彿とするs-don氏の楽曲。

上記の通り、多幸感の溢れる輝きとリズムトラックのハネ具合が、聴き進める内に心を高揚させてくる。

やはりmajorでのⅣ-Ⅲからの同主調変形→連結は強い。つよい(小学生並みの感想)。

初期の輝くようなテックダンストラックとも、そうでないトラックとも相性良く組み込む事が出来るだろう。

 

 

10 - hidetaka - You Know Me

 

今迄のhidetaka氏の作風にはあまり見られなかった、煌びやかな性格を持つ一曲。

本人曰く、地元の陶磁器産業に肖って題を命名したとの事だが、

確かに釉薬の光沢と輝きを彷彿とさせる音色の作りにも感じ取れる。

如何様な陶器を思い浮かべるか、是非とも聴いてイメージをしてみて欲しい。

 

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xbtcd30 - V.A. / GOLD DISC [DISC2]

01 - ANKI - Obsidian

 

冒頭から唐突にトランシーな世界に放り込まれたような感覚を覚える。

勿論の事、そうした部分が極めて洗練されたものとして配置されているが、

かつて存在した、攻撃的なワンリードで全体を牽引して前進していくような引力を持つ構成も見受けられる。

その両要素をごく自然に融合させるANKI氏の経験と手腕は見事という他に無い。

 

 

02 - TooL-SONIC - 2009 PTSD

 

ハードグルーヴ系統として成立しながら、ローリングベースで序盤から捲し立てて来るTooL氏の新作。

他にもサイケ系のバックグラウンドを感じさせるようなサウンドも感じる、熱量に溢れた仕上がりとなっている。

精神に訴えかけるようなウネリが耳と身体を通過して行く、特徴的な世界観を保持する楽曲。

 

 

03 - Philce fw. MAME - BULLDDDRUM

 

Philce氏監修、ジャングルテラー要素の強い異色曲。

同氏曰く、exbit traxでは一部分でも低速BPMを扱った楽曲が極めて少ないため、

BPM110を経由する楽曲を制作したかったとのこと。

事実、効果的に聴き手のテンションを引っ張り上げる箇所は聴き応えが有る。

スクラッチサウンドは、cochaMe氏ファンクラブ名誉会員(?)でもあるMAME氏の実際のプレイにより作られている。

 

 

04 - Anne Maddox - Rage Rage Off-Tank

 

Anne Maddox氏お得意の疾走感と重さを兼ね備えたヘビートラック。

常に牙を向いて襲いかかっているような凶暴性を孕んでいる。

ケダモノのように踊り狂うも良し、聴き込んで自らを奮い立たすも良し。

そう出来るだけの影響力を秘めた、飢えた四足獣の膂力の如き5分弱の聴覚体験。

 

 

05 - Mah!ro - Energy & Power

 

CaZ氏とBassfreq氏とのユニットBCMの一員としても知られる注目の若きハードスタイラーMah!ro氏。

若くは在れど青さなど微塵も感じさせぬ完成度と勢いとパワーに満たされた渾身の作。

まさしくタイトルの通りの力量を感じさせる。

彼の今後の可能性を非常に感じる楽曲である事は自信を持って宣言できる。

 

 

06 - Massive New Krew - Let Me Tell You

 

exbit traxコンピレーションCDへ初の提供を果たして下さった、通称・MNKのハードスタイルトラック。

今コンピレーションのdisc2では4作ハードスタイル楽曲が収録されているが、

この曲では殊にスクリーチの鳴りの心地よさとラインの綺麗さが飛び抜けて際立っているように思える。

 

 

07 - Nhato - Dropdropdropdrop

 

ハートダンスレーベルとしてのexbit traxにNhato氏が曲を寄せて下さるとの事で、

どのようなアプローチで完成させるのかと思っていたら、

よもやガッツリバキバキのフーバーマシのハードスタイルが来るとまでは思い至らず、度肝を抜かれた思いだった。

Nhato氏らしさも十分感じる流麗なブレイクであるが故、尚の事全体の勢いとの対照性とドロップの破壊力が凄まじい。

 

 

08 - CaZ - This Mind of Mine

 

同時頒布のxbtcd29に収録された、Zac氏のリミックス元である原曲。

沁み入るようなユーフォリックハードスタイルを書かせたらやはり定評のあるCaZ氏に軍配が上がるであろう。

弟分であるZac氏のリミックスと原曲との聴き比べも、同ディスクに収録されたハードスタイルトラックとの聴き比べも、

また一興であろう。

 

 

09 - Philce - Goth

 

近頃Philce氏の特有の手法と化してきた傾向のある、

グロウル&トロールフェイスサウンドメインのテックダンス+フューチャーベースのハイブリッド作。

相も変わらず、この両要素のコントラストバランスの感覚には舌を巻くものが有る。

エキサイトさせつつもチルさせもする、ミステリアスな空気を同時に味わえる。

 

 

10 - cochaMe - Give Me Your Love

 

今季はハードトランス系の作風で攻めに攻めるcochaMe氏の、本作がラストを飾る。

前カットナンバーのコンピレーションでの作品とはやや趣向を変え、女性ヴォーカルが前面に出ており非常に印象に残る仕上がり。

トランスからクラブミュージックに本格的に傾倒した身としては、

改めてスーパーソウ系の音色と、深くも透き通ったリバーブ成分の美しさに気付かされる奥深さを感じる。

恐らくはハードトランス全盛期にハマった方々も、気に入って間もない方々もお気に入りの一曲になるだろう。

 

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