Liner Notes from Bee.Bee.(洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコース作曲専攻卒)
xbtcd31 - V.A. / VACANT EP
"vacant mind after gold disc prot..."
tr01 - exbit trax / Intro2018Au
tr02 - SANY-ON / Shinkansen
tr03 - Thereza Ingram / Synastry
tr04 - Yosshie 4onthefloor / Emotional Girl
tr05 - ni-21 / Current
tr06 - Anne Maddox / OVO
tr07 - Philce / pic tec astrogic
tr08 - s-don / Kosmonavt
tr09 - cochaMe / Black Jade
tr10 - CaZ / This Time
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02 - SANY-ON - Shinkansen
18年の夏にSANY-ON氏が来日した際の記憶や印象だろうか、
新幹線の構内アナウンスをボイスサンプルとして大胆に用いている。
彼の作品の中ではあまり見られなかったアーバンな空気感の音色が用いられている。
韓国に生まれ育った彼。五感によって日本をどう感じたかを、
聴覚的に探って想像しつつ聴いてみるのも乙な物かも知れない。
03 - Thereza Ingram - Synastry
ボイスサンプルや音色サンプルの音色が、ワープハウスorハードハウス黎明期を感じさせる。
リズムやベース等の下回りを入れ替えるだけで、上述のサウンドにも化けそうでもある。
そうしたジャンルが個人的嗜好である層に(著者含む)に刺さる可能性も十分にあるように思える。
DJプレイの場でジャンルを跨ぐ際などにも良さそうな有用性も兼ね備えたトラック。
04 - Yosshie 4onthefloor - Emotional Girl
某5月の日の曲のような、空に突き抜ける晴れやかさがファーストインプレッションとして飛び込んで来る。
ハウシーなピアノバッキングやシンセベース配置等々、ハッピーなタイプのテックダンス。
明るいタイプの同ジャンル楽曲は幾つか在れども、この曲のようにクリアな空気を孕んだものは少ないように思う。
Yosshie 4onthefloor氏の新しいアプローチとも言えよう。
05 - ni-21 - Current
ni-21氏の定番スタイルである重厚な叩きつけるビートの作風とは少々変わり、
跳ねるようにタイトなキックをメインにしたグルーヴ、そこにtinribを彷彿とさせるアシッドラインが絡まり合い、
程よい身軽さと、ナイフのような切れ味が鼓膜から体を突き抜ける錯覚を覚える。
そして、out of blue的サウンドスケープを持つブレイクで宙に投げ出される。
曲調による重力操作を受けているかのような感覚を体験して欲しい。
06 - Anne Maddox - OVO
リズム系音色が紡ぎ出すその質量が隙間なく塊となって、前方から後方へひたすらに流れてゆく。
オールドスクール系でもお馴染みのレイヴィーサウンドも緻密に組み込まれ、
フロアでも普段聴きでもリスナーの血中アドレナリン濃度を上げてくれる事であろう。
ピュアなパワー感の観点で言えば、間違いなく今季コンピの中で最高値を叩き出している。
07 - Philce - pic tec astrogic
程よくチリついた味のあるエレピの哀愁感、Philce氏お得意のBrostep系パートが全面に出る部分の対比。
そしてエレピコードバッキングに絡まる、奏法豊かなフルートソロも何とも官能的である。
荒々しさと繊細さの二面性を併せ持ちながら、リッチな空気演出を実現出来うる作品。
08 - s-don - Kosmonavt
テックダンスを追い続けている方々なら、一聴すればNight Liberator氏の再来かと耳を疑う事だろう。
ブレイク部分のシルクのように繊細なパッドメインの空間から、
16分~32分感覚で刻まれたブ厚いコードのドライブ感が顔を出し、
黎明期~中期までの、あの感覚が蘇る。
09 - cochaMe - Black Jade
dan dysonのベースの質感やRandom But Raw的なフィルターの効いたBUZZ系シンセによる、
cochaMe氏の得意であるところの攻め攻めトラックかと思いきや、
近年のサイケ界隈における展開トレンドを思わせる3連リズムを挟み込む鋭いフックを忍ばせている。
DJ現場でもリッスンユースでも、普段のcochaMe氏らしい曲だと思って聴いてしまっては、
恐らく『んん?!』と思わず背筋が伸びてしまうだろう。
10 - CaZ - This Time
流麗で優しく抱擁されるようなバラードライクなヴォーカルが耳に残る、CaZ氏らしい様式美的作風。
それでありつつも、重さを伴うパワーとユーフォリックな構成は安定して今作でも我々の期待に答えてくれる。
最後のブレイクドロップからは、ヴォーカルのエモーショナルさをより引き立てる、
更に深く抉り込むような、半ばRawstyle的な打撃力を増したキックが、聴く者を更に加熱させる。